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<<   作成日時 : 2013/03/07 18:08   >>

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Kayak


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潮の流れに逆らい、腕の感覚を失いつつ漕ぎ続ける。
奥に長く続くフィヨルドの入り江を廻りこむと、そこには巨大な氷河を懐に抱いた山がそびえたっていた。



カヤックとの出会い


広大なアラスカは、そのほとんどは手付かずの自然で覆われている。
しかし、人間が気軽に行ける場所はとても限られている。国立公園でシャトルバスに乗り、キャンプ場で夜を過ごし、日中、ハイキングを楽しむ。風景は雄大であるが、何か物足りなさを感じ始めていた。
結局のところ、僕はこの広大なアラスカの大地を、何か大きな劇場の中で観覧しているような感覚を覚えていたのかもしれない。

21才の時に出会ったアラスカの広大さに圧倒され、旅を通して、様々な場所で様々な野生動物に出会っていたが、そこには常に人間の為だけに道路がひかれ、野生動物は人間を当たり前のように意識した振舞いを見せ続けていたように思う。
そして、アラスカの原野をたった一人で心から味わいたいと感じていた頃、自分の思いつく限り、アラスカの中で最も遠く、心から孤独感を味わえる場所は北極圏のブルックス山脈であった。
最初の旅から3年が過ぎた、1997年24歳の時であった。

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飛行機に乗り、眼下を見おろせば、蛇行を繰り返しながら原野を流れる川が幾つも見ることができる。

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キャンプ道具を詰め込み、何もない原野に水上飛行機で降ろしてもらう。ここから川を下り、下流の村まで数百キロの間、誰も住んでいない。



初めてのカヤック
(1997年8月アラスカ北極圏ノアタック川)


今、僕が眺めている川の河岸には、今まで誰かが立ったことがあるのだろうか?グリズリーやオオカミ、ムース、そしてカリブーはきっと、この視界の何処かにいるはずなのだろう。しかし、今は、何も見ることができない。
眼下を流れる川の河岸に立ち、そこでグリズリ−の気配に怯え、川を渡るカリブーの大群に出会ったとしたら、どんなに素晴らしいことだろう。
そんなときに出会ったのが折りたたみのできるカヤックだった。これなら飛行機に積み込むことができる。
価格は目が飛び出るほど高かったが、所持金のほとんどをはたいてそのカヤックを買って、真っ直ぐにブルックス山脈を流れるノアタック川に行った。まだろくにカヤックに乗ったこともないくせに・・。
24歳の時のことである。

念願であった、眼下を流れる北極圏の川を見下ろしていると、何故だか突如、不安に襲われ、ひき返すなら今しかないのだと思いながら、パイロットに戻ってくれと言おうか言うまいか、迷っていたことを懐かしくおもう。
とうとう、言い出せないまま、目的地の川の近くの小さな湖に下ろされてしまった。
パイロットはあっという間に荷物を下ろし、「グット、ラック!」といって飛び去ってしまった。
何故だか、川を下るのに湖に下ろされ、大量の荷物を2時間もかけて川まで運び、そこでカヤックを組み立てようとしたのだけれども、購入してからまだ一度も完全に組み立てたこともないことをすっかり忘れてしまっていた。上手く組み立てられないのだ。
とにかく、しっかりと組み立てて川を下らない限り、人間界には戻れないので、必死になって組み立てた。だが、そう簡単には上手く行くはずもない。
背後の茂みからクマが出てこないかと、注意を払いながら4時間かけてようやく形らしく組み立てることができたが、何故か部品が一つだけ余ってしまった。
その日は1時間ほど試しに(といっても生死に関わるので必死だったが・・)漕いだが、案外、安定もよく無事に野営に適した場所を見つけることができた。
余った部品が何処のものなのかは、その日は結局、分からなかった。
夕暮れ時、対岸の斜面に1頭の黒っぽいオオカミが、さかんに地面の匂いを嗅ぎながら、過ぎ去っていった。


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翌日、朝起きて愕然とした。
テントまわりにクマの足跡があったのだ。
その足跡は、僕がここにテントを張る前につけられたものなのかなと最初は思っていたが、よく見ると僕の靴の足跡の上にクマの足跡があった。
足跡を追跡してみると、背後の茂みから真っ直ぐに僕のテントに向ってきて、テントを一周するように遠巻きに廻り、立ち止まった形跡があった。
それから、また再び、背後の茂みに戻っていったらしい。
どうやら、寝ている間にクマがテントにきていたらしい。
ここはもう、人間の世界ではなく、クマの領域なのだ。
僕は毎日、川を下りながら強烈な緊張感と孤独感(この地球上に自分が一人だけとり残されたような感覚)を体験し、早く帰りたいとばかり思いながら、道中に出会うカリブーやオオカミ、赤キツネ、そしてグリズリ−に心を奪われていた。

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下り始めて二日目、長く続く瀬でひっくり返り、そのままカヤックにしがみつきながら北極圏の身を切るような冷たい水の中を、しばらく流されてしまった。
どれだけ流されたことであろう。
恐怖と冷たさの中、息が苦しくなり、力が抜けてゆくような感覚(低体温症?)の中、奇跡的に浅瀬に流れ着いてなんとか岸に這い上がり、カヤックを引き上げ、すぐに焚き火をおこし、身体を温めた。
寒さと恐怖で身体の震えがいつまでも止まらなかった。
その日はテントの中で涙を流してしまった。

しかし、このときの強烈な体験は更なる旅へ向かわせ、その後、カヤックを漕いでグレーシャーベイの氷海を旅し、カヤックでクジラやシャチの群れを追い、そして入り江の奥深くの神秘の森を旅してきた。
そして、幻のスピリットベアにも出会う事ができた。

カヤックは人間と自然と繋ぐ欠かす事のできない乗り物になっていった。

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野営に適した場所に着き、カヤックと荷物を引き上げテントを張る。
テントの中に寝袋を敷き、荷物を整理し、濡れた衣服を脱ぎ、着替える。
薪を集め、火をおこし食事の準備を始める。
お米が炊きあがるまでの間、コーヒーで一息入れ、ご飯ができたら、一気に食べつくす。
食器を洗い、後片付けを済ませ、再び火に薪をくべながら、再びコーヒーを沸かす。
お気に入りの本を読み始めると、すぐに睡魔が襲ってくる。
テントに戻りあっという間に眠る。
しかし、テントの外の気配に目が覚めてしまう。
今晩もクマの存在が気になる・・・。

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